・データ分析で15億円削減?事業投資での生成AI活用を含む伊藤忠のデジタル戦略そ調査!
データ分析で15億円削減?事業投資での生成AI活用を含む伊藤忠のデジタル戦略を調査!
伊藤忠商事は2025年10月の事業説明会で、新たなデジタル戦略を公表しました。サプライチェーンの課題可視化やAI活用を軸とする取り組みで、世間の注目を集めています。公表資料によると、同社はサプライチェーン領域で「SC『視る・解く・回す』サービス」を提供開始し、約70種のダッシュボードで輸配送や在庫などのデータを可視化、業務最適化を図りました (1)。この施策で年間15億円のコスト削減効果を得た例もあり (2)、業務プロセスの効率化が進んでいます。また、AI技術では生成AI(いわゆるChatGPTなど)の社内展開が進み、約2万6000人が利用して227万時間以上の業務時間削減を実現しています 。さらに、生成AIを使った事業投資支援にも注力し、良質な投資案件の創出を目指すと発表されています 。(以下、小括:ここまで説明会の概要と効果を整理しました。)
伊藤忠の代表的DXソリューション・サービス

伊藤忠のデジタル戦略では、社内外のデータを活用して業務課題を「見える化」し、AIで「解決策」を立案・実行する一連のサービスが複数展開されています。主な事例として、次のようなソリューションが挙げられます。
| ソリューション/取り組み | 対象領域・用途 | 特徴・概要 | 効果・実績 |
|---|---|---|---|
| SC「見る・解く・回す」サービス(SCみ・と・ま) | サプライチェーンDX | 輸配送、庫内作業、在庫管理など70種のダッシュボードで課題を可視化し、約1ヶ月で課題診断 → 改善策提示 (3) | サプライチェーンの効率化により、導入企業で年間15億円のコスト削減達成例 。物流2024年問題への対応や社員の業務負荷軽減に貢献。 |
| MKT「見る・解く・回す」サービス(MKTみ・と・ま) | マーケティングDX | マーケティング課題の可視化・改善支援。1ヶ月ほどで企業の課題を診断し、データ整備や業務改善策を提案 (4)。BrainPadと共同で構築。 | グループ企業のマーケティング力強化を支援。データを基盤にした施策提案により、市場志向(マーケットイン)の発想を深化。 |
| 生成AI研究ラボ・社内ChatGPT環境 | 社内業務・投資支援 | 2023年5月にブレインパッド等と共同で「生成AI研究ラボ」を設立。社内専用のChatGPT環境を整備し、生成AIを経営支援AIプラットフォームとして活用 (5) (6)。 | 2023年7月までに1,000名超の社員が試用 し、2025年には約2万6000人が利用(227万時間の業務削減) 。投資案件探索・分析の効率化にも応用。 |
| 事業投資支援向けAI活用 | 投資業務プロセス | 生成AIを活用し、投資プロセス(企業発掘→調査→申請など)の各段階に人力支援型AIを導入。外部データと社内知見(失敗事例など)を組み合わせ、高品質な案件パイプラインを構築 。 | 情報参照やコスト算出を商談中に自動化し、顧客ニーズに合致する製品提案を実現 。これによって、投資先選定の精度向上や意思決定の迅速化が見込まれる。 |
| ARIS(Software AG)導入 | プロセスDX・可視化 | 業務プロセスの可視化・自動化プラットフォーム「ARIS」を全社採用。部署横断で異なる業務手順を統合し、高度化したプロセス設計を支援する (7)。 | 戦略性の高い業務プロセスの約10~15%(対象部門全体)の可視化をわずか2ヶ月で完了し、今後年間50~60件のプロセス可視化を計画 。DX推進の加速に寄与。 |
各ソリューションはいずれも、データ利活用により従来は見えなかった課題を「見える化」し、その分析結果をベースに改善を実行する流れを確立しています。表に示したように、SC「み・と・ま」サービスではサプライチェーンの可視化と改善が図られ、多くの企業が物流効率化やコスト削減を達成しています 。また、このアプローチはマーケティング領域にも応用され、新設のMKT「み・と・ま」サービスで市場ニーズ把握の促進が図られています 。加えて、2023年5月設立の生成AI研究ラボでは、社内データと最新の自然言語AIを掛け合わせた経営支援プラットフォームを開発しています 。現在は社内専用ChatGPT環境の提供を進め、社員約1,000人以上が使い始めており、活用者は急速に増加しています 。
生成AIの投資・業務活用事例

伊藤忠では特に生成AI(Generative AI)の投資・業務活用に注力しています。公式発表によれば、投資プロセスの各段階(企業発掘、調査、社内承認など)に生成AIを活用しているといいます 。例えば、これまでは営業担当者の経験に依存していた製品選定業務に大量の関連情報を学習させ、交渉中に情報参照やコスト算出を即座に実行できる仕組みを整備しました 。この結果、営業現場は顧客ニーズに即した最適製品を高速提示できるようになり、業務効率と提案品質の向上に寄与しています。さらに、産業案件の発掘では、生成AIに企業データや過去の失敗事例を盛り込むことで候補企業の絞り込みと深掘りを効率化し、質の高い投資判断を支援する試みも進んでいます 。このように各種の生成AI活用により、投資案件のパイプラインが豊富になるとともに、優良案件への投資を通じて企業価値の向上を目指しています。
マーケットイン発想の組織文化変革

伊藤忠はこうしたDX推進に際し、社内を横断する組織改革も進めています。マーケティング視点の育成を担う新設組織(第8カンパニー)を立ち上げるなど、従来のプロダクトアウト型からマーケットイン型へのシフトを図っています 。MKT「み・と・ま」サービスは、まさにマーケットイン発想で全社に浸透させる試みであり、「見える化→解決→自走化」によって持続的なマーケティング強化を支援します 。一方で供給側の組織と連携し、生活消費分野の顧客データを活用した新サービス創出も進行中で、DX人材の育成やデータ駆動経営の文化醸成も重要テーマとされています。
技術・コスト・課題

伊藤忠が導入する技術基盤には海外クラウド(Azure OpenAI Service)やプロセスマイニングツール(ARIS)、BIダッシュボードなど多様なソリューションが含まれます。コスト面では、たとえばAzureを介したGenerative AI環境構築には初期投資と運用コストが伴いますが、同社はセキュアな環境整備を優先し、2023年7月までに安全なChatGPT基盤を構築するなど準備を進めています (8)。2025年10月には「約2万6000人の利用で227万時間削減」という成果が報告されています が、裏付けにはAI利用の導入効果検証が不可欠で、どの程度のコスト投資でこれら効果を得たかは公表されていません。
技術的な課題としては、生成AIの誤出力(幻覚)への対応とデータ品質の確保が挙げられます。Userプロンプトの精緻化支援や社内データとの連携には専門的なノウハウが求められます。また、データガバナンスの整備も必須であり、社内システムへの安全な接続や情報漏洩対策を徹底しています。ARIS導入による業務プロセス標準化も、各部署の業務手順やツールが多様であった過去からの脱却が課題です 。実際、営業部門や製造部門など部署ごとに異なるSOPを「ひと目で分かる形に可視化する」ことで、初めて効率的自動化が可能になるとされています 。
まとめ:DX推進による商社の変革
伊藤忠商事は、自らの商社モデルを進化させるべく、DX技術を徹底的に取り入れています。上記のような取組みは、単なる業務効率化にとどまらず、「ハンズオン経営」と「データドリブン経営」のハイブリッド化を進める動きともいえます。実際、SC・MKTの各「み・と・ま」サービスは、企業内外のデータ活用によりこれまで個別対応だった課題を横断的に捉え直し、それぞれの改善を迅速化する仕組みです。一方、生成AIの導入は社員の業務生産性を大幅に高め、事業投資の意思決定を強化します。現時点で得られている大きな効果(コスト削減や工数削減)から見ると、一定の成果が出ていると評価できます。
今後の展望としては、これらの施策の横展開・深化がカギです。たとえばサプライチェーン領域で得た知見を他社にも提供するビジネスモデルや、生成AIの結果検証フローを含めた全社ガバナンス体制の確立などが考えられます。また、デジタル事業群(BrainPadやCTCなどグループ企業)との連携をさらに強め、先進技術の社内導入速度を高めていく動きも進行中です。伊藤忠の最新デジタル戦略からは、日本企業がDXを通じて商社ビジネスをどのように再定義しようとしているのか、そのヒントが多く読み取れます。今後も公式発表や業界レポートを注視し、最新の展開を追っていきたいと思います。
参照資料: 伊藤忠商事の公式プレスリリース・ニュース、業界ニュースなど よりまとめました。
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