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全社のデータ活用テーマ選定支援|製造業で社内の課題を洗い出し、最初の一本を決めるまで

支援実績

全社的なDX・データ活用テーマ選定支援事例と、そこから学ぶ進め方

全社のデータ活用テーマ選定

本記事では、大手製造業のDX推進部にて全社的なDX・データ活用の取組テーマ選定をご一緒した事例を紹介します。会社規模が大きくなるほど、取り組み可能なテーマは多くありますが、その選定及び洗い出しは容易ではありません。

背景

お客様は社内のデジタル・データ活用を担当するDX推進部です。全社のデータ活用を進める役割を負っている一方で、社内の各部署が実際に何をやっているかは、あまり見えていない状態ですが、これは多くの会社様で共通して見られる傾向です。

特にBtoB領域では、扱う製品や業務も専門性が高く、外から見て直感的に理解できるものではありませんし、それは社内であっても同様です。システム・デジタル側の専門家から見た時、そもそも何が行われているのかは掴みにくいのが普通です。

ご相談の内容

当社では「データ活用推進」をさせていただくことが多いですが、今回はその中でも特に上流となる下記のような課題がございました。

  • 全社的な課題ヒアリングを行い、データ活用の取組テーマを選定したい
  • そのためのヒアリング計画を作るところから伴走してほしい

当社は、ヒアリング計画の設計、実際のヒアリングと調査、課題の棚卸し、そしてテーマを選ぶ基準づくりの支援を行いました。

データ活用テーマ選定の流れ

そもそも、データ活用・DX推進とは

DX推進・データ活用と一括りに言っても抽象的です。当社では、下記のような3つのステージに分解してデータ活用の段階を判断します。

データ活用に取り組み始めた段階ほど、AI領域として注目されやすい3段目に関心が向きます。DXやデータ活用を専門にする企業や専門家は、2段目から入ることが多いでしょう。ただ実際には、1段目でつまづいている、もしくはボトルネックとなっているケースが多いでしょう。

段階1. そもそも必要な情報を調べられるか、検索できるか

意思決定をする人や実務を担う人が、必要な情報を共有され確認できる状態にあるかどうか。そして、その情報がExcelやPDF、Wordといった形で電子化され、記録として残っているかどうか。

段階2. データやファイル形式が揃っていて、データ基盤に載せられるか

保存されているデータの形式が一律になっているか。ExcelやPDFのフォーマットが人によって、あるいは毎回変わっていないか。揃っていれば、BigQueryやSnowflake、S3などのデータ基盤へ流していくパイプラインが組み得るでしょう。ここは生成AIによって、形式を揃えるハードルが大きく下がったと言えるでしょう。

段階3. 予測や認識といった具体的なテーマ

データ基盤にあるデータを元に、画像認識をするのか、音声の文字起こしをするのか、需要予測や発注最適化をするのか。あるいはBIやダッシュボードで見えるようにするのか。

1段目から3段目へ飛ばされてDXプロジェクトが進むケースはよく見られます。実証実験としてはよいのですが、本番の取り組みでは、形式の揃っていない非定型のデータが学習のパイプラインを壊してしまいます

ヒアリングの計画作成

先述の通り、社内のDX推進部や担当者が社内業務や課題に精通しているケースは多くありません。本件も同じで、業務を管轄している責任者にヒアリングを行う必要がありました。

そしてヒアリングは、課題を聞くための場であると同時に、この後にデータ活用を進めていくときに物事を円滑に運ぶための関係づくりの場でもあります。ここの意味合いは、想像より大きいと考えています。

しかし、全社的なヒアリングを行うことは決して容易ではありません。何らかの切り口から全社的な業務を切り分けることで、網羅的に行う必要があります。

この切り口は大きく、1. 「機能・事業」での区分、2. 「部署・部門」での区分があります。本件では「部署・部門」別に切り分ける形を採りましたが、一般的にはむしろ「事業・機能」の区分で分けることがより直感的でわかりやすいでしょう。たとえば、データに基づく製品開発や研究の促進をテーマに置き、その業務に関わる部署は後から紐づける形が2になります。本件では全社を網羅する必要性があったため、より全体像の見えやすい部門別での区分けを行いました。

課題の仮説を先に立てる。 直接、部門の責任者にヒアリングできるのであれば特に問題ありません。ただ、ヒアリング先との関係構築ができていない場合、「お土産」を用意できると信頼されやすいでしょう。例えば、その部門の業務や課題を事前に調べ、こういう課題や取り組みがあるのではないか、という仮説を作っていく形です。または、ヒアリングの前に事前アンケートを取る方法でも良いでしょう。

対象者を選び、日程を押さえる。 誰に聞くかを決めて実際に時間をもらうところは、推進担当者だけでは動かせません。全社的な視点と権限、そして社内の人脈を持つ責任者の協力が必要になります。

課題を棚卸しする。 ヒアリングを通して挙がった課題やテーマを、後述の基準に沿ってリスト化します。棚卸しの目標は、テーマ選定の議論の場にそのまま持っていける形にすることです。

進める上での留意点

データ活用推進のテーマ選定の際、下記のような点に留意しましょう。

  • 初回のテーマ選定は、あくまで仮説として扱う。 社内の状況にどれだけ詳しい責任者・ベテランの方が課題・テーマとして認識していたとしても、現場での本当の課題は異なる可能性が高いです。課題ヒアリングで得られるのは、取り組みを進める上での方向性と大義名分に過ぎません。実際の課題は、着手した後に新しく判明します。

  • 具体的な課題や作業は現場担当者のExcelに隠れている 実際の業務上の課題は現場にヒアリングしても伺うのが難しい部分で、実際の作業に使われている膨大なシートの中に、具体的なフローや詰まっている箇所が埋まっているケースが多いです。

  • 現場に聞くときと、責任者に聞くときで、上がるテーマの傾向は異なる 上位レイヤーの方ほど先進的なテーマを取り上げやすく、現場担当者ほど実業務でいま直面している痛みや作業の効率化に関心が向きます。この関心のずれがあるので、ヒアリングを元にテーマを進めようとすると、DX推進側が板挟みになりやすいです。基本的にテーマ選定は上位レイヤーの観点で決めることにはなりますが、施策として現場まで落ちていく際にはそういった温度差がある点は留意して良いでしょう。

  • 施策によって便益を受ける部署と、負担を負う部署がある ある施策によって便益を受ける部署がいる一方で、その施策に協力することで何の便益も受けず、負担だけを強いられる部署が発生してしまう場合があります。データ活用の推進は、後者の協力なしには進みません。全社として正の効果があると分かっていても、協力してもらう側に見返りがなければ話が前に進まないので、テーマを選ぶ時点で、関係者の合意が得られるかは重要になります。

  • 棚卸しした課題から優先順位やテーマ選定を行う際の選定基準 DX・データ活用の推進では、価値創出を目指した攻めの取り組みと、費用削減や効率化といった守りの取り組みがあります。

観点
利益 正の効果・価値創出の観点、費用削減・効率化の観点
コスト データ整備の状況と整備の難易度、実施期間や規模
制約条件 役員など社内幹部の協力や、現場の協力やリソース

テーマの洗い出しが終わった段階では、テーマ選定自体はあまり難しくない場合が多いです。制約条件や社内政治も併せれば、推進するテーマはあまり悩む要素もなく設定されることが多いと言って良いでしょう。