AI需要予測と仕入れ最適化を、オークションと在庫管理のデータで実現した事例
国内の中古車を仕入れて、海外の自社店舗で販売する貿易企業様から「売れ行きをもとに仕入れを最適化したい」というご相談をいただきました。
本記事では、既存の在庫管理システムのデータと、外部のオークションデータをつないで、どの店舗で、どの車が、いくらで、どれくらい早く売れるかを仕入れに行かすためのAI需要予測と仕入れ最適化システムを開発し導入した事例を紹介します。
仕入れにかかる分析と判断の負荷を下げ、データに基づく仕入れ最適化を行う
クライアントは海外に複数の店舗を持つ貿易会社で、今回は主に国内の中古車を仕入れて輸出する業務がターゲットになります。目標は仕入れ数を増やし販売数や利益を増加させることでしたが、これには複数のハードルがあります。
- 担当者(ディーラー)の処理能力 どのブランドで、どんな状態の中古車が売れているか?この判断には長期的に中古車販売に関わったベテラン担当者でなくては判断できず、かつ地域によっても好まれる車種は変わります。ベテラン担当者の仕入れ可能数には上限があり、かといって社内の仕入れ担当者の判断はしばしば誤り、不良在庫を残してしまいます。
- リードタイム 中古車の海上輸送に最低で一ヶ月かかり、また検閲の規制は刻一刻と変わります。また人気車種や属性も日々移り変わり、変化を敏感に察知する必要があります。「中古車の価格が落ちる / 上がる」は結果論ですが、その前に「在庫回転率が落ちる」といったシグナルがあります。しかし、これを大量の車種が存在し、また各地域でも日々状況が変わりうる中、担当者が都度状況を判断するのは困難です。
一方で、社内では在庫管理システムによって全ての車種の販売状況が記録され、WEB上のオークションでは競合他社の販売記録も確認はできる状況です。しかし、それらのデータが仕入れの意思決定に結びつくには距離のある設計があり、担当者は悩まされていました。
外部オークションデータと自社在庫・販売実績データを統合
本取り組みでは、既存の在庫管理システムと、外部オークションデータを繋ぎ、仕入れ・販売担当者が仕入れ最適化を行う意思決定支援ツールを開発しました。
具体的には、
- 社内データ:店舗別の在庫、仕入れ原価、販売にかかる日数、販売価格
- 外部データ:オークションの落札相場、成約価格、出品数などの需給、車種別の売れ筋の動き
を統合し、それらをAIと統計解析のより仕入れ最適化システムを開発しました。
熟練バイヤーが脳内で行なっていた「相場、売行、在庫、そして経験」に基づく仕入れ判断を、データを元に構造化させ、さらに良い意思決定を可能にするだけでなく、その意思決定を新米のディーラーでも行えるように改善することができました。
効果:販売台数が導入前から25%増加
導入後、バイヤーチームが毎日確認していたいくつものデータソースは本システムに代替され、仕入れの手は目に見えて速く、多くなりました。バイヤーチームが文字通り業務中に「最も見ている時間の長いシステム」となりました。
また、導入実験時に下記のような定量的効果が算出されました。月間の販売台数はおよそ25%増加しただけでなく、不良在庫の割合が減り、全体として店頭在庫日数が2日程度短くなりました。尚、販売価格自体は大きく変わっていません。
受発注AIシステム導入前と導入後の効果比較
| 指標 | 導入前平均 | 導入実験時 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 月間の販売台数 | 約820台 | 約1,025台 | +25% |
| 平均の店頭在庫日数(到着から成約まで) | 約18.2日 | 約16.4日 | -1.8日 |
| 平均販売価格(仕入れ価格帯は同じ) | およそ95万円 | およそ98万円 | 微増(3%程度) |
本事例の期待される効果
本事例は、在庫管理システムおよび外部オークションデータを統合したことにより、受発注をAIにより最適化した事例を紹介しました。ポイントは、公開データであるオークションデータと、非公開である在庫管理システムを統合することで、市場データを反映しつつ自社でのデータを活用し、実業務を改善させた点です。本事例は仕入れ担当者の業務をAIで置き換えたというより、その業務の意思決定を支援するツールとして、また新人の仕入れ担当者のノウハウの伝達を可能にした要素があり、同様の受発注をもつ様々な現場で応用が可能と言えるでしょう。